簿記や金融の知識がなくても、資金調達や投資家などの仕組みがわかるようになる「いろはファイナンス」のシリーズ。これから起業やスタートアップを目指す人なら押さえておくべき用語まで、まるっと解説!
シード期の資金調達
価格の設計ができても、動き方を知らなければ調達は進まない。今回は、シード(会社を立ち上げてすぐの、いちばん初期の資金調達の段階)で実際にどう投資家を探し、会い、決めていくかを見ていく。
シードの資金調達は、投資家候補を数十社の単位でリスト化して、順に声をかけていく活動だ。数だけ見ると多く感じるかもしれないが、これには理由がある。
連絡の経路は大きく2つある。一つは、各社の問い合わせフォームから直接連絡する方法だ。紹介を待つのではなく、自分から当たっていくやり方で、コールドアプローチと呼ぶ。
もう一つは、知人や既存の投資家からつないでもらう紹介だ。コールドアプローチよりも話を聞いてもらいやすいと言われている。
どちらの経路でも、実際に投資の検討として会えるのは、声をかけた数のごく一部だ。数十社に当たって、面談まで進むのは数社ということも珍しくない。
ただし、会えた数が少なくても、そこから投資が決まる可能性は十分にある。紹介がないからと諦める必要もない。シード投資家の中には問い合わせフォームからの連絡を歓迎しているところもあり、そこから投資に至る例は実際にある。
この、声をかけた数に対して会える数がかなり絞られるという構造を前提に、リスト化する社数を設計する。
資金調達におけるコツとは?
資金調達は思っているより時間がかかる。声をかけ始めてから実際に資金が入るまで、3ヶ月から6ヶ月ほどかかるのが一般的な前提だ。つまり、基本的なことのように思えるが、やはり大事なのは動き出しの“早さ”である。目安としては、会社の手元資金が残り6ヶ月を切る前に動き出すべきだと言われている。
資金が尽きる直前に慌てて動き始めると、交渉での立場が弱くなる。早めに動き出すことで、焦らず条件を見極める余裕が生まれるということを念頭に入れておきたい。
投資家との出会い方
投資家との出会い方には、いくつかの経路がある。それぞれの特徴を知っておくと、動き方を組み立てやすくなる。
投資家が投資を決めたあと
投資家との面談が進み、投資したいという意思が固まると、タームシートを受け取る。タームシートとは、出資額やバリュエーション、株式の種類など、出資の条件をまとめた書面のことだ。
タームシートを受け取った後は、デューデリジェンスに進む。デューデリジェンスとは、投資家が会社の事業内容や財務状況、契約関係などを詳しく調査する手続きのことだ。
デューデリジェンスを通過すると、最終的な契約書を投資家と締結する。その後、実際に資金が会社の口座に入る、着金という段階に至る。ここまでの流れを理解しておくと、今どの段階にいるかを見失わずに進められる。
シード期で問われるのは、興味を持たれるか
これまでエクイティの解説を通じて価格の設計も扱ってきたが、シード期において最も大切なのは、価格の最適化ではない。まず投資家に興味を持ってもらえるかどうかだ。
バリュエーションを完璧に決めてから声をかける必要はない。「バリュエーションは相談したい」というスタンスのまま動き出しても、話は十分に進む。
シード期の資金調達で問われているのは、価格の精度よりも、事業そのものに魅力を感じてもらえるかどうかだ。この順番を取り違えないことが、動き出す上でいちばん大事な点だ。
つまずきやすい3つの点
最後に、多くの起業家がつまずきやすい点を3つ挙げる。
まとめ
シードの資金調達は、声をかけた数に対して実際に会える数がかなり絞られる活動だ。紹介がなくても、問い合わせフォームからの直接コンタクトで決まることもある。調達には3ヶ月から6ヶ月ほどかかるため、手元資金が残り6ヶ月を切る前に動き出すことが大切だ。そしてシード期に問われているのは、価格の最適化よりも、まず事業に興味を持ってもらえるかどうかだ。
これでエクイティ編は一区切りだ。株式の仕組みから出し手、調達額、評価額、そして動き方まで、返さなくていい資金を集める道を見てきた。
株式を渡して集める道の他に、会社にはもう一つの選択肢が残っている。返済義務と金利を伴う代わりに、株式を手放さずに済む道だ。次回はこの借入という道を見ていく。
用語ミニ辞典
- コールドアプローチ:紹介を介さず、問い合わせフォームなどから投資家に直接連絡する方法。
- ウォームイントロ:知人や既存の投資家から別の投資家を紹介してもらう出会い方。
- タームシート:出資額やバリュエーションなど、出資の条件をまとめた書面のこと。
- デューデリジェンス:投資家が会社の事業内容や財務状況を詳しく調査する手続きのこと。
- アクセラレータ:一定期間、事業の成長を支援し、投資家との接点も提供するプログラム。



