簿記や金融の知識がなくても、資金調達や投資家などの仕組みがわかるようになる「いろはファイナンス」のシリーズ。これから起業やスタートアップを目指す人なら押さえておくべき用語まで、まるっと解説!
調達額を考える前に必要なこと
調達額を考える前に必要なのが、会社が毎月どれだけの資金を使っているかという数字だ。この毎月の支出額のことを、バーンレートと呼ぶ。
バーンレートは、家賃や人件費、広告費など、会社を動かし続けるために出ていく資金の合計だ。人件費やオフィスの費用、開発にかかる費用などが積み重なって、この一つの数字になる。
売上があっても支出のほうが大きければ、その差額が毎月燃えていく資金になる。だからこそバーンレートと呼ばれる。
このバーンレートが分からないまま調達額を決めると、多すぎたり少なすぎたりする金額になりがちだ。まずは今の支出を正確に把握することが出発点だ。
次のマイルストーンまでの月数を掛ける
バーンレートが分かったら、次に考えるのは期間だ。次のマイルストーン、つまり次の資金調達ができるくらいまで事業を成長させる目標地点に届くまで、何ヶ月かかるかを見積もる。
この期間の目安は、18ヶ月から24ヶ月ぶんだ。なぜこの長さなのか。次の資金調達には、投資家との面談や条件の交渉に数ヶ月かかるのが普通だ。資金が底をつく直前になってから動き出したのでは、間に合わない。
だからこそ、資金が尽きる前に余裕を持って次の調達活動に入れるだけの期間を、あらかじめ見込んでおく必要がある。これが18ヶ月から24ヶ月という目安の理由だ。
この期間には両側のバランスがある。短すぎると、事業がまだ十分に育たないうちにすぐ次の調達に追われることになる。逆に長すぎると、必要以上に多くの株式を手放すことになってしまう。
バーンレートに、この18ヶ月から24ヶ月という期間を掛け合わせると、事業を続けるために必要な金額のおおまかな水準が出てくる。
現実的な見積もりを調達額にする
期間を掛けた金額をそのまま調達額にするのは危険だ。事業計画どおりに進むことは、実際にはほとんどない。
そこで、計算で出た金額に少し余裕を足す。想定より採用が遅れたり、売上が計画を下回ったりしても持ちこたえられるようにするためだ。
具体的な例で考えてみる。月に400万円を使う会社が、24ヶ月ぶんの資金を見込むとする。単純に計算すると、400万円に24を掛けて9,600万円になる。ここに余裕を足すと、調達額の目安はおよそ1億円になる。
集めすぎることにも、集めなさすぎることにも、それぞれ弊害がある。多く集めれば当面は安心だが、後で見るとおり手放す株式の比率が上がり、持ち株の希薄化が進む。
逆に少なすぎると、次の調達までに目指していたマイルストーンに届かず、次の投資家との交渉で不利な立場に立たされかねない。だからこそ、多すぎず少なすぎない金額を、バーンレートから逆算して見極めることが大切だ。
手放す株式の比率も、同時に決める
調達額と並んで考えるべきなのが、その調達で創業者がどれだけの株式を手放すかという比率だ。
一般的な目安は、15%から20%だ。多くても25%に収めるのが、創業者が自分の持ち分を守るための基本的な考え方とされている。
この、会社の株式を誰にどれだけ持たせるかという長期的な設計のことを、資本政策と呼ぶ。1回の調達だけでなく、その後何度も続く調達を見越して考える必要がある。
なぜ比率を抑えることが大事なのか。1回の調達で株式を渡しすぎると、その後のシリーズA、シリーズBと調達を重ねるたびに、創業者の持ち株比率はさらに下がっていく。
この、持ち株比率が下がっていく現象は希薄化と呼ばれ、以前の回でも触れた。1回渡しすぎれば、次の回でまた渡し、その次でもまた渡すことになり、下がり方は積み重なっていく。調達のたびに少しずつ薄まるからこそ、1回あたりの放出比率を15%から20%、多くても25%に抑えておく意味がある。
調達額と手放す株式の比率で会社の価値が見えてくる
ここまでで、調達額と手放す株式の比率という2つの数字が出そろった。月400万円を使う会社なら、およそ1億円を、株式のおよそ15%から20%を手放して集める、という具合だ。
この2つの数字は、切り離して考えることはできない。同じ金額でも、手放す比率によって会社の値段の付け方は変わってくる。
実はこの2つの数字が決まると、もう一つの数字が自動的に見えてくる。それが評価額、会社全体の値段だ。
まとめ
調達額は感覚で決めるものではなく、月々の支出であるバーンレートに18ヶ月から24ヶ月ぶんを掛け、余裕を足して算出する。月400万円を使う会社が24ヶ月ぶんを見込む場合、単純計算では9,600万円だが、余裕を足すとおよそ1億円が目安になる。
同時に、1回の調達で手放す株式の比率も決めておく必要がある。目安は15%から20%、多くても25%だ。手放しすぎると、その後の調達のたびに持ち株比率が薄まっていく。
調達額と手放す比率が決まれば、あとはこの2つから会社の値段が導かれるはずだ。次回は、評価額はどう決まるのかを見ていく。
用語ミニ辞典
- バーンレート:会社が事業を続けるために、毎月使っている資金の額のこと。人件費やオフィス、開発にかかる費用などが含まれる。
- マイルストーン:次の資金調達につながるような、事業成長上の目標地点のこと。
- 資本政策:会社の株式を誰にどれだけ持たせるかを、長期的な視点で設計する計画のこと。
- 希薄化:新しく株式を発行することで、既存株主の持ち株比率が下がっていくこと。調達を重ねるたびに積み重なっていく。



