簿記や金融の知識がなくても、資金調達や投資家などの仕組みがわかるようになる「いろはファイナンス」のシリーズ。これから起業やスタートアップを目指す人なら押さえておくべき用語まで、まるっと解説!
スタートアップ創業期に使える窓口
スタートアップは実績も担保もないことが多く、普通の銀行融資は受けにくいのが実情だ。そこで創業期向けの公的な仕組みが用意されている。
代表的なものが日本政策金融公庫の創業融資だ。日本政策金融公庫は政府系の金融機関で、民間銀行が踏み出しにくい創業期の融資に力を入れている。
現在の制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」という名前で、融資の上限は7,200万円、うち運転資金は4,800万円までだ。創業して間もない会社は、原則として担保も保証人もなしで利用できる。
金利は年3%台が基準で、創業間もないことや雇用を増やす計画など、条件によって引き下げがある(2026年時点。最新の条件は公庫の公式サイトで確認できる)。返済期間も設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内と長めに設定されており、創業期の会社に合わせた作りになっている。
もう一つの窓口が信用保証協会付きの融資だ。信用保証協会は、会社が返済できなくなった場合に代わりに銀行へ返済する、保証人のような役割を担う公的機関だ。
保証があることで銀行側のリスクが下がり、実績の薄い会社でも融資を受けやすくなる。多くの地方銀行や信用金庫が、この保証付き融資を創業期の会社に提供している。
会社成長期の選択肢、ベンチャーデット
創業融資は主に立ち上げの資金だ。会社がある程度伸びてきた段階では、ベンチャーデットという選択肢が出てくる。
ベンチャーデットとは、すでにエクイティで出資を受けているスタートアップを対象に、専門の金融機関やファンドが提供する融資のことだ。
エクイティで一定の資金と信用を確保した会社に対して、追加の運転資金や設備投資の資金を貸す形が一般的だ。日本でも提供する金融機関が増えていて、あおぞら銀行グループや日本政策投資銀行が専用のファンドを運営しているほか、静岡銀行や商工中金といった銀行も手がけている。
融資に新株予約権(将来、あらかじめ決めた価格でその会社の株式を買える権利)を組み合わせる形が多く、貸し手はこの権利で株式の値上がり益の一部を受け取る。担保や返済条件は案件ごとに設計される。
ベンチャーデットの狙いは、次のエクイティ調達までの期間を延ばすことにある。株式を追加で渡さずに手元資金を積み、次の調達をより良い条件で進めるための時間を買う発想だ。
デット(借入)の利点と負担
デットの一番の利点は、株式を手放さずに済むことだ。創業者や既存株主の持ち株比率が下がらず、会社の所有権を守ったまま資金を確保できる。
出資を受けるたびに持ち株比率が薄まっていくエクイティと比べると、借入は所有権への影響がない資金調達の手段だと言える。
一方でデットには返済という負担が必ず伴う。事業がまだ利益を生んでいなくても、決められた期日に利息を付けて返さなければならない。
赤字が先行しやすいスタートアップにとって、返済の負担は経営の重荷になりやすい点だ。売上が計画どおりに伸びなければ、返済のために事業判断が縛られることもある。
担保や保証人を求められる場合もあり、審査では事業計画や実績が細かく見られる。実績が薄い創業初期ほど、借りにくいという壁に当たりやすくなる。
エクイティとどう組み合わせるか
多くのスタートアップは、デットとエクイティのどちらか一方だけを使うわけではない。両方を組み合わせて資金を確保する会社が少なくない。
たとえばエクイティで調達した資金を事業の核となる部分に使い、創業融資や信用保証協会付きの融資で当面の運転資金を補うといった使い分けができる。
株式を渡す量を抑えたい場面では借入を厚くし、返済の負担を抑えたい場面では出資を厚くする。この配分の判断そのものが、資金調達の設計の一部になる。
まとめ
スタートアップが現実に使える窓口としては、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会付きの融資が創業期の入り口になり、成長期にはベンチャーデットという選択肢も出てくる。エクイティと組み合わせて使う会社も多く、どちらか一方に絞る必要はない。
資金調達には正解が一つあるわけではない。エクイティを核にしながら、必要に応じて創業融資などのデットで補う。その配分を自分の会社に合わせて設計することこそが、資金調達そのものだと言える。
もしあなたがこれから資金調達を考えているなら、最初の一歩は難しいことをする必要はない。関心のある投資家や金融機関を何社か書き出し、その中の1社にまず問い合わせフォームから連絡してみる。そこから、全ては始まるのだ。
用語ミニ辞典
- デットファイナンス:返済義務と金利がついた資金を借り入れて確保する方法のことだ。
- 日本政策金融公庫:政府系の金融機関で、創業期の会社への融資に力を入れている。
- 信用保証協会:会社が返済できない場合に銀行へ代わりに返済する、保証人役の公的機関だ。
- ベンチャーデット:エクイティ調達済みのスタートアップを対象にした専門的な融資のことだ。
- 希薄化:出資を受けるたびに、既存株主の持ち株比率が下がっていくことだ。



