簿記や金融の知識がなくても、資金調達や投資家などの仕組みがわかるようになる「いろはファイナンス」のシリーズ。これから起業やスタートアップを目指す人なら押さえておくべき用語まで、まるっと解説!
エンジェル投資家の正体
出資をする側にもいくつか種類がある。代表的なのが、エンジェル投資家とベンチャーキャピタルだ。
エンジェル投資家は、自分自身の資金でスタートアップに出資する個人だ。会社ではなく、一人の人間が自分の判断で資金を出す。
多くは元経営者や実業家、あるいは事業を売却して資金を得た人だ。自分が事業を作った経験を持つ人が多く、経験やつながりも一緒に提供してくれることがある。
判断のスピードが速いことも特徴だ。組織の稟議を通す必要がなく、その人が良いと思えば数週間で出資が決まることもある。
出資する金額は、数百万円から数千万円程度が中心だ。まだ事業が形になる前、アイデアと創業者への信頼だけで出資してくれる貴重な存在だ。
組織として出資を行う、VC(ベンチャーキャピタル)
ベンチャーキャピタル(VC。投資家から集めた資金でスタートアップに出資し、株式売却で利益を得る投資会社)は、個人ではなく組織として出資を行う。
VCは自分たちの資金だけでなく、年金基金や金融機関、事業会社などから集めた資金を運用している。預かった資金を増やして出資者に返す責任を負っている点が、エンジェル投資家との大きな違いだ。
そのため出資の判断も、個人の直感だけでは決まらない。担当者が良いと思っても、投資委員会と呼ばれる社内の合議を経て、正式に決定する流れが一般的だ。
判断には数週間から数ヶ月かかることが多く、事業計画や市場の大きさ、成長の裏付けを細かく確認される。その代わり、エンジェル投資家より大きな金額を扱える。
創業直後はエンジェルが支え、VCが後を継ぐ
エンジェル投資家は、まだ何もない段階でも、人を見て出資できる。事業計画が粗くても、創業者への信頼だけで動けるのが強みだ。
VCは組織として説明責任を負うため、ある程度の裏付けを求める。その代わり、事業が伸び始めた後は、エンジェルより大きな金額を継続して出資できる。
つまり会社が生まれたばかりの時期はエンジェルが支え、事業に実績が出始めるとVCが主役になっていく流れが多い。
会社の資金調達には、ラウンドが存在する
スタートアップの資金調達は、一度で終わるものではない。会社の成長段階に応じて、何度かに分けて行われる。この一回一回の調達を、ラウンドと呼ぶ。
最初のラウンドはシードと呼ばれる。事業の種を育てる段階という意味で、まだ売上が小さいか、これから立ち上げる時期に行われる。
事業が形になり、売上や利用者数が伸び始めた段階の調達をシリーズAと呼ぶ。
さらに事業が拡大し、より大きな金額を集める段階がシリーズBだ。この後もシリーズC、シリーズDと続く会社もある。
ラウンドごとに出資する人も変わる
シードの段階は、エンジェル投資家やシード専門の小さなVCが中心だ。実績よりも、創業者と事業のアイデアへの期待で出資が決まる。
シリーズAに進むと、本格的なVCが主役になる。売上や利用者数など、事業が実際に動いている証拠を示せることが前提になってくる。
シリーズBまで進むと、より大きな金額を扱う大手のVCや、海外の投資家が加わることも増える。事業の伸び方だけでなく、次の成長をどう作るかという計画も問われる。
段階が進むほど、会社の実績が積み上がっている分、集められる金額も大きくなる傾向がある。同時に、出資者に求められる説明の水準も上がっていく。
事業会社が出すコーポレートベンチャーキャピタル
出し手はエンジェル投資家とVCだけではない。事業会社が自社の資金でスタートアップに出資する、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC。事業会社が自己資金を使ってスタートアップに出資する投資の仕組み)という形もある。
CVCは利益だけを目的にしていない点が特徴だ。出資先のスタートアップと自社の事業を組み合わせて、新しい売上や技術を取り込む狙いを持っている。
そのため、同じ業界に近い事業会社のCVCから出資を受けると、資金だけでなく販路や技術提携につながることがある。一方で、その事業会社の意向に事業の方向性が影響されやすい面もある。
CVCが登場する段階に決まりはないが、事業の内容が事業会社との連携先として見えやすくなるシリーズA以降で加わるケースが多い。
まとめ
出資の出し手には、個人で動くエンジェル投資家、組織として出資するベンチャーキャピタル、事業会社が出すコーポレートベンチャーキャピタルがある。会社が生まれたばかりの時期はエンジェルが支え、事業に実績が出るとVCが主役になっていく。調達はシード、シリーズA、シリーズBと段階を重ねるほど金額が大きくなり、その分求められる説明の水準も上がる。
次回は、いよいよ実践編だ。自分の会社はいくら集めるべきなのか、その決め方を見ていく。
用語ミニ辞典
- エンジェル投資家:自分自身の資金で早い段階のスタートアップに出資する個人投資家。
- ベンチャーキャピタル(VC):投資家から集めた資金でスタートアップに出資し、株式売却で利益を得る投資会社。
- コーポレートベンチャーキャピタル(CVC):事業会社が自己資金を使ってスタートアップに出資する投資の仕組み。
- ラウンド:会社の成長段階に応じて行う資金調達の一回一回の呼び方。シード、シリーズAなどがある。
- 投資委員会:VCが出資を正式に決定するために経る、社内の合議の場。



